【私説・論説室から】 聖菜さん、忘れない
刃物メーカーにも言えよ!
餅メーカーにも言えよ!
ロープメーカーにも言えよ!
浴槽メーカーにも言えよ!
薬品メーカーにも言えよ!
あ!新聞紙も使い方次第で人を殺せますので、新聞社も安全性を確立してから販売してねw
年の瀬のさいたま市。現場には多くの花束が手向けられた。一周忌を弔い、そして十七歳の誕生日を祝うために。一年前、娘の親友だった高校生稲垣聖菜さんが、暴走車の犠牲になった。十六回目の誕生日を目前にして。
「利便性を優先する社会を見直すきっかけに」と母智恵美さん。聖菜さんの友人たちが遺族のもとに結集し、七十五歳以上に運転免許証の更新チェックを毎年課すことなどを訴えて、ネットで署名を呼び掛けている。
中でも、自動車メーカーに対して安全技術の開発強化を求めているのは、きわめて重要な視点だと思う。高齢化時代は、根本的な疑問と向き合うべきだと告げているからだ。なぜメーカーは責任を問われないのか、と。
人間は誰しもミスを犯す。ならば、運転操作を誤っても、せめて落ち度のない歩行者を巻き込まない安全性能を確立してから、車を売るのが道理ではないか。無数の命とひきかえに利益を得るような構造は許されない。
「行ってきます」「車に気をつけて」。そんな家族のやりとりが、当たり前になっているのはおかしい。子どもたちが闘っているのは、大人社会の理不尽さである。 (大西隆)