TDLでは“あわや大惨事”も… “偽造”告白モデルが語る「インスタ」の魔力
連中は蝿なんだから、殺虫剤撒けば(゚з゚)イインデネーノ?
インスタグラムに憑かれた「インスタ蝿」たちが、周囲の迷惑も鑑みず繰り広げる狂騒――。あの「鼠の王国」では、あわや大惨事という騒動が繰り広げられている。
千葉県浦安市にある東京ディズニーリゾートは園内に「インスタ映え」スポットが約100カ所ある「聖地」とされ、中でも1、2の人気を誇るのがシンデレラ城がバックに写る広場だ。確かに、4月上旬の休日に現地を訪れたところ、開園直後の午前8時半には、撮影に励む集団で広場が埋め尽くされた。大半は10代から20代までの男女で、皆こぞってシャッターを切るのだが、地べたに座る若者が多いのが異様に映る。
そのワケを聞くと、
「お城のテッペンまで、見切れずに撮れるから」(10代女子高生)
「立った状態だと、そのまま足が写り込んでしまうのが嫌だ」(20代女性)
「みんなそういう風に撮ってるから」(20代カップル)
ふぅーと、溜息が出るような答えしか返ってこない。
で、皆一様にSNSに投稿すると胸を張るが、そんな彼らに突如、“撤収命令”が下された。
「荷物をもって後ろに下がってくださーい!」
と必死に呼び掛けるスタッフの後ろには、ランド内を走行する乗り合いバス。何度もクラクションが鳴らされ、座り込んでいた集団は散り散りになったが、バスが行ってしまえばまたぞろ集まる。こんな光景が終日繰り返されているのだ。
ジェットコースターで撮影
これまでも、園内ではインスタを巡るトラブルが絶えなかった。最近では、車を模したオブジェの前で、地べたに寝そべり轢かれたように見せるポーズが流行し、来園者の通行を妨げているとネット上で炎上した。
さらに、である。最も危険な行為は、看板アトラクションであるスプラッシュ・マウンテンなどのジェットコースターで起きていた。
言わずもがな、ジェットコースターに乗車しての撮影は規則で禁止されている。万が一、走行中に手に持っていたスマホやカメラが勢いで飛ばされ、周囲の人に当れば大惨事だ。むろん、撮影者自身がよいアングルを求めて身を乗り出せば、障害物と衝突する危険もある。
にもかかわらず、インスタ映えすると人気のゴーコースターでは、前方に座った子どもを撮影しようと、無理な格好でスマホを手にする母親の姿が見られ、カメラで撮影している男性客が注意される一幕もあった。
「今まで事故はありませんが、撮影禁止の声掛けを徹底しております」(運営するオリエンタルランド広報)
「本当は独りぼっち」
どうしてインスタはこうまで人々を狂わせるのか。
「写真を投稿するためだけに、新幹線で京都まで出掛けたこともあります」
と明かすのは、東京ガールズコレクションなどで活躍するモデルの西上まなみさん。昨年4月、バラエティー番組で、自ら“インスタ偽造”を告白し、炎上騒ぎを起こした経験を持つ。
「本当は独りぼっちなのに、仲良しのお友達とランチしているように見せたい。それで、2人分のお洒落な食事をカフェで頼んで何度も投稿していました。けれど、1人で全部のご飯を黙々と食べている時が辛いというか、すごく虚しい気持ちになって……。インスタで自分を演出するのは皆やっていることで、あたり前だと割り切っていたのですが」
結局は嘘の上塗りを重ねてしまったと話を継ぐ。
「憧れのモデルさんは、インスタにキラキラした写真をたくさん載せて、フォロワーや〈いいね!〉の数も多かった。だから、自分もその数を増やせば理想のモデルさんたちに近づける。そう信じて煌びやかな日常を演出するうち、本当に自分が友人に囲まれ充実した日々を過ごしているような錯覚を起こしていた。さすがに嘘をついたり、人に迷惑をかけるような投稿は反省していますが、インスタは止めません。私にとっては憧れの生活を現実にするための未来日記なんです」
〈リア充アピール代行〉
そんな彼女が繰り返した“自作自演”を、ビジネスにする業者まで現れた。その名も〈リア充アピール代行〉と銘打ち、インスタ撮影を手伝う事業を展開するファミリーロマンスだ。パーティーやレストランなど希望の場所に、インスタに投稿したいイメージに合ったスタッフを派遣。0歳から85歳までの男女を揃え、顔出しで撮影に応じると、社長の石井裕一氏は言う。
「今年4月でサービス開始から丁度2年を迎えましたが、お花見やクリスマスなど『インスタ映え』のシーズンは、月に50件強の依頼を頂きます。料金は派遣スタッフ1人あたり2時間8000円を頂戴しますので、お客様は学生さんより社会人に成りたての20代から30代の方が多いですね」
彼らはどんな夢を見るのかといえば、
「モデルのような容姿の弊社スタッフを侍らせて、インスタ上で派手な自分をアピールした人もいました。依頼者の40代ビジネスマンは、あたかも大企業の上役に接待されているような姿を見せたくて、年配スタッフを指定して飲み会に呼んだケースもあります」(同)
もはや一億総インスタ時代に入らん様相を呈しているのだが、評論家の大宅映子氏はこんな意見だ。
「インスタで犬だの猫を紹介するだけならまだ可愛いと思うけど、毎日の食事だったり何処ぞの会社で働いているなんてことを、大声で不特定多数にとっ散らかす必要がどこにあるのと言いたいですね。とにかく若い人はアクセルを踏み続けるのではなく、一時停止して己の頭で考える。そうしないと、結局は自分がSNSに使われてしまうわよ」
「週刊新潮」2018年4月19日号 掲載
http://news.livedoor.com/article/detail/14613314/