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電通、NHK取材に「自浄能力がない」と感想を述べた若手社員を「戒告」の懲戒処分にして自浄能力のなさを改めて示す

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まぁ、長年の社風なんぞ、簡単に変えれる訳じゃネ~けど、下衆すぎる・・・


 電通が、社長セッションのあとでNHKの出待ち取材に答え「自浄能力がない会社だなと思う」等と感想を述べた20代社員に、始末書を書かせて「戒告」の懲戒処分を下していたことがわかった。先週(11月21日の週)の局会や部会等を通して、大半の現場社員に知れわたった。社員からは「ごく普通の意見で何も処分されるような内容ではない」「経営側にとって都合の悪い話が出ないよう、締め付ける目的」「かわいそう」といった同情の声ばかりが聞かれた。NHKは本人を特定できる形で、かつ「40代社員」と見た目で適当に判断して年齢を偽った報道を行い、翌日になって該当部分を丸ごと削除。誤報のうえ、取材協力者に報道被害を与え、処分で電通社内を萎縮させ、視聴者には説明なく突然「なかったこと」にするという、報道倫理が欠落した、ずさんな仕事ぶりだった。

◇「内容なし」石井社長の説明
 厚労省が午前中から強制捜査に踏み切った、11月7日(月)。午後には、もともと予定されていた「社長セッション」、すなわち石井直社長から社員に向けての、「我々の働き方の進化に向けて」と題した説明会が開かれた。

 社員によると、石井社長からの説明は、レジメを見ながら、一方的なスピーチ形式で、およそ40分強、続いた。大枠として、3つの問題点→3つの視点からの改革→4つの具体策→2つの投資、という順番に説明された(左記概要を参照)。どれも当り前のことばかりで、逆にこれまでの経営不在ぶりが際立つ内容だ。

 問題点の第一として挙げた「デジタル領域などが広がった結果、仕事量が増大した」などは、誰もが認識している市場環境の変化なので、対応せず放置した経営者の無能ぶりを示すもの。全般的に、昭和時代から何も変えてこなかった“化石ぶり”が際立つ内容だ。

 社員に対しても、響くものがなかったようだ。「リアルタイムで聞いていましたが、可もなく不可もなく。かなり内容のない説明だった、という印象だけです」(若手社員)

 確かに、具体策が曖昧で、数字も固有名詞も期限も何らのコミットメントがなく、検討項目をあげつらってポーズを見せただけ、という印象だ。(しかも、過度に体育会系な社風に触れないなど、本質的な問題点の認識も間違っている)

 そして、「様々な社員のみなさんの声を取り入れて、みなさんとともに新しい電通を作っていければ、と思っています」と述べ、最後に、あらかじめ用意された、いくつかの質問に答えたという。そのなかの1つが、以下だ。

 ――具体的に、どの業務を減らすのか?

 石井社長「ここではお答えできません。なぜならば、業務そのものに関しては、個別に、取引相手のある話だから。先日来、社内の文書が外に漏れている。業務そのものに関する内容は、相手様があるから、答えられない。情報が漏れることについて申し上げれば、ご自分の考えを述べることはもちろん構わないが、社内の情報を外に出すことは、明確な社規違反です」

 以上が、社長セッションの概要であった。「社員のみなさんの声を取り入れて」「ご自分の考えを述べることはもちろん構わない」と述べていることに注目していただきたい。その直後に、「社員のみなさん」の1人が「ご自分の考えを述べ」たら、即刻、処分されたからだ。

 経営者は、口先ではなく、行動で判断される。本音では、何も変わろうとする気などない、ということだろう。

◇日本の貧しい労働者事情を象徴
 事件や不祥事が起きると、マスコミが社員の受け止め方を報道するため、「出待ち」してコメントを求めるのは世界の民主国家共通。リーマンショックが起きれば、リーマンブラザーズ証券本社から出てきた社員が(時に笑顔で堂々と)取材に答え、その様子が世界中に報道される。

 海外では顔を出して堂々と自分の意見を述べる姿が報道されるケースも多いが(※内部告発的なシビアな問題は別)、日本では、労働者が少々の批判的感想を述べた程度で、人事で不当な扱いを受けたり、懲戒処分されてしまうことが予想されるため(そして今回、処分が現実のものとなった)、残念ながら、そういう報道はできない。

 企業内においては、憲法第21条(表現の自由)は通用せず、労働者の人権は不当に制限されている。処分されても、労組も、何も言わない。過労死が起きる背景には、人権意識の低い経営者による、こうした過度な労使の主従関係、「支配―隷属関係」がある。特に軍隊的・体育会的な社風の電通のような会社では顕著だ。

 従って日本では、報道にあたっては、コメント内容に会社に対する批評や意見が含まれる場合は、当人の許可を得ない限り、相対的な「弱者」である取材先を守るため、クビ下映像にするか、モザイクをかけて特定できない形にするのが一般的な報道倫理である。顔が出ているインタビューでは、本音などとても話せないため、その話には、そもそもニュースバリューもない。

 今回の戒告処分は、こうした日本の貧しい労働者事情を象徴するケースである。過労死はもちろんだが、その後の会社の取り組みに対して批判的な感想を述べる社員への一方的な処分も、同じ「労働者の人権軽視」という土壌から生まれている。石井社長が、こうした問題の本質を理解しておらず、会社に変わる気がないことがよくわかる。


NHKで全国放送された批判的な感想
 この社長セッションが終わり、電通ホール(電通本社ビル隣接)から出てきた社員は、次々と待ち構えていたマスコミから、コメントを求められた。多くは、黙っていた。そのなかに、正直に感想を述べた若手社員がいた。内容から判断するに、これは本音だ。

 NHK NEWSウェブでは「外から圧力がかからないと変わらないのは悲しいことで、『自分たちのことは自分たちで』という考えがない。自浄能力のない会社だ」と報じられた(冒頭画像参照)。NHKニュース7』の字幕では、「捜索が入って急に騒ぎ出すのは自浄能力のない会社だなと思う」と記された。

 電通の過労死事件は今回が初めてではなく、実際に再発したという事実があるのだから、「自浄能力のない会社だなと思う」という発言は、論理的に正しい客観的事実を述べているにすぎないし、社内の業務内容についてしゃべっているわけでもない。きわめて一般的な感想にすぎない。

 だが、電通は体育会系・軍隊気質の社風。規律を重んじ、上の言うことは絶対で、意見を言う者は「口ごたえ」とみなされ、許されない。小さな会議ですら、1年目が意見を言うなどとんでもない、というカルチャーだという。だから、上から押し付けられる理不尽に大量な仕事を断れず、過労死事件が起こったのである。社長のスピーチに対して、20代の若造が感想を述べるなど、とんでもない口答え、なのだった。

 この感想に逆ギレした石井社長は、電通として、この20代社員に、戒告処分を言い渡した。

 「戒告」とは、電通の懲戒処分のうち、懲戒審査会を開かないで下すことができるが、始末書は書かせるもの。給与の減額はともなわないものの、軽いものでもない。その下の「厳重注意」よりも重いランクだ。

 通常、この程度の感想を述べたことを理由に始末書を書かせて戒告の懲戒処分にするなど、他社ではまずありえない。異常な軍隊的カルチャーを裏付ける形となった。

 上司から、この処分が行われた件について知らされた若手社員によると、「処分の理由は、取材対応については許可がいるため、だそうですが、社内規定のどの条文に違反するのかなど、詳細の説明はなく、不明です」。問答無用で粛清、ということである。

 もし会社の許可がない取材が不可能となったら、大本営発表以外の情報が世の中に存在しなくなり、報道やジャーナリズムによる監視機能が働かなくなる。その結果の1つが、今回の過労死事件の再発であった。再発防止を誓うなら、逆に、「社外に取り組み内容を情報発信して、社外のフィードバックもどんどん受けよう」と言わなければならない。

◇社員に知れ渡り、萎縮効果
 この処分は、事実なのか――。他の複数の電通社員に聞くと、いずれも処分の事実を知っていた。「社長が極端にリークを恐れているようで、そのような処分がなされたのでしょう」(ベテラン社員)、「情報統制し、締め付ける目的でしょう。(顔を出して言うなら)もっとうまい言い方をすればよかった」(中堅社員)。皆に知れわたっているのだ。


 処分されたのは、入社5年未満、「MC」(メンバークラス)ランクの20代社員。見た目が老けているからといって「40代」と嘘を全国に放送してしまうNHKの報道倫理も、かなりお粗末だ


1http://www.mynewsjapan.com/reports/2294