資金提供側の証人喚問
細野議員自ら、融資の透明性の証明
さて、全てヤッてもらいましょうか?
公人だからこそ、果たすべき説明責任
加計学園の加計孝太郎理事長や日大アメフト部の内田正人前監督と井上奨前コーチの例を引くまでもなく、何らかの問題が生じた時は釈明するタイミングとその内容が重要で、下手すると疑念を深めてしまいかねない。加計理事長の場合は明らかに在京メディア外しで、安倍晋三首相の発言との整合性もとれていなかった。また内田氏や井上氏は、悪質タックルを強いられた選手よりも会見が遅れた上、しどろもどろになってしまい、大学とアメフト界を追われている。
これらは説明責任が命取りになりかねない、またはすでになっている事例だが、ましてや公人は国民に対して説明する責任をより強く負うものだ。それでは6月27日の朝日新聞の朝刊1面に「細野氏 選挙中に5000万円受領」「証券会社から」「当初報告せず」と報じられた細野豪志衆議院議員は、その説明責任をどう果たすのか。
疑惑の経緯
同紙によると細野氏は昨年10月の衆議院選挙中(10月19日)に都内の証券会社から5000万円借り入れたが、「選挙資金ではない」と判断して資産報告書に記載しなかった。その証券会社は昨年5月に親会社である自然エネルギー開発会社が買収したもので、ほとんど稼働実態がなかった。だが細野氏に5000万円貸与する6日前(10月13日)に、親会社は証券会社に2億5000万円超を増資。その一部が細野氏にわたったと睨んだ証券取引監視委員会が今年3月に証券会社に報告を求めたため、細野氏は4月に資産報告書に5000万円の借入金と訂正し、返還している。朝日新聞の取材に対して細野事務所は、「急な政治資金が必要になる可能性があると考え、個人として借り入れた」と回答。借入れ時期を「選挙後」と勘違いしていたため、任期開始時(10月22日)を基準とする報告書に記載しなかったと書面で答えている。
確かに資産報告書の“誤記”は訂正すればよく、処罰されることはない。例えば自民党の竹下亘総務会長も、保有株式の1銘柄の数を2万6000株から5200株に改めている。しかし細野氏の場合、それ以外の疑惑がある。そして当初はそれに積極的に答えようとはしなかった。
不十分な説明でお茶を濁す?
しかし翌28日にスタートした「『平成のうちに』衆議院改革実現会議」の会合の後、細野氏は記者が求めるぶら下がりに応じざるを得なくなった。同会議は自民党の小泉進次郎筆頭副幹事長が事務局長を務めていることが話題となり、大勢のマスコミが押し寄せた。細野氏はその会議の呼びかけ人のひとりで、副会長も務めている。
「いろいろみなさんから質問いただたものについては最大限、紙でお答えしたつもりだ」
細野氏のややこわばらせた表情から、本人自身が問題の深さを十分に認識していることがわかるが、その説明は十分なものとは言えなかった。まずは5000万円を借り入れた動機だ。
答えられていない様々な疑問
「当時、希望の党を設立し、どう運営していくかについて様々考えなくてはならない立場だった。政党助成金は4月まで入ってこない。何らか考えておかなければならない意識があった」
これが細野氏の言い分だが、資金を借り入れる前の9月27日に開かれた希望の党結党記者会見で、小池百合子東京都知事は「若狭さんや細野さんはじめ議論してきたが、リセットして私自身が立ち上げる」と述べている。確かに選挙戦に入ると、小池知事は「排除発言」の影響もあってその求心力を失っていったが、細野氏が党の中心というわけではなかった。そして希望の党の代表には、細野氏ではなく玉木雄一郎氏が選任された。玉木氏は党の運営費を自分名義で借金してまかなっており、細野氏からの“出資”はない。
さらに借入先の証券会社の親会社との関係についての質問になると、「役員会がある」と細野氏は答えないまま立ち去った。だが最大の疑念はここにある。
親会社の常勤取締役が元自誓会(細野派)の田村謙治元衆議院議員で、和田隆志元民主党衆議院議員も非常勤取締役。また同社の代表取締役である中久保正巳氏は細野氏を団長とする超党派の議員団を引き連れ、昨年12月にタイを訪問している。さらに同社は細野氏が環境大臣を務めた2012年に公募された環境省の再生エネルギー事業の事業者として選ばれ、220万円の補助金を得た。
なお中久保氏との関係の深さは、細野氏が証券会社から5000万円借入した際に、証券会社の取締役会では反対の意見が強かったが、それを中久保氏が押し切ったという事実からも明らかだ。
こうした疑惑は多々あるのに、細野氏はこれらにまだ何も答えていない。そしてこれらについてじっくりと答えてもらうには、“ぶら下がり”ではとても足りない。十分に時間をとり、記者会見を行う必要がある。
かつては「総理大臣を狙う男」と言われた細野氏だが、それにしてはその危機管理能力、いまのところお粗末すぎる。それを惜しいと思うのは、筆者だけではあるまい。
https://news.yahoo.co.jp/byline/azumiakiko/20180629-00087382/