口論動画が公開され注目を集めたことも
今回の大阪の事件は2018年2月7日朝に発生。30代男性会社員が、JR大阪環状線大正駅で降車後、男に刃物で腹を刺され負傷した。容疑者は逃走していたが、警察は翌8日、警備員(派遣社員との報道も)の男(62)を殺人未遂の疑いで逮捕した。共同通信などが報じた。「(男性が)以前から優先席に座っていて腹が立った」などと供述しているという。
このニュースを受け、ツイッターでは
「ヤバい怖い」
「呆れるというか情けないというか」
「優先席は見直し必須だな」
といった声があがった。
優先席をめぐるトラブルといえば、2016年秋に「YouTube(ユーチューブ)」に投稿された、座っている男性と目の前に立っているお年寄り男性との口論動画が注目を集め、11月25日に産経ニュース(ネット版)が記事化するなどした。男性の側からお年寄りを撮影している構図で、お年寄りが「日本語通じないのか」、男性が「もう1回言えよ」と話すやりとりが何度か繰り返され、
「だから、代わってくれって言ってるんだよ。席を」(お年寄り)
「なんでだよ」(男性)
「優先席だから」(お年寄り)
「なんでだよ」(男性)
と、2人ともとげとげしい声の調子で応酬を続けた。お年寄りは時折、男性に対し、右人差し指を向けながら、怒っている様子だ。顔にはモザイクはかかっていない。話は平行線のまま、ほどなく動画は終わる。ネット上では、男性とお年寄り双方に対し厳しい反応が寄せられた。
過去にも「包丁で襲いかかる」事件
また、15年6月には、首都圏を走るJR京浜東北線で、71歳男性が、優先席で隣り合わせた50代男性がタブレット端末を使っていることに腹を立て、口論となって包丁まで持ち出し、襲い掛かった。50代男性にけがはなかったが、容疑者は銃刀法違反の疑いで逮捕された。当時、朝のワイドショーでも取り上げられた。
同じ15年では1月にも、相鉄線の横浜市内の駅ホームで、61歳のアルバイト男性警備員が、ドアが閉まらないよう立ちふさがったとして、威力業務妨害の疑いで逮捕された。容疑者が、車内の優先席に座ってスマートフォンを操作していた若い女性に怒鳴り声を上げ、「降りろ」と叫んでいたという。読売新聞などが報じている。
実際、優先席の優先対象ではないものの優先席に座る人は、結構いるようだ。「NEWSポストセブン」サイトが17年12月7日に配信した、「女性セブン」読者へのアンケート結果(回答472人、全国の20~70代男女)の記事を見ると、電車の優先席が空いていた場合、「座る」派が64.8%と6割超えの多数派だった。
「優先席では席を譲るべきだ」と思う人は減少傾向
さらに優先席に座るだけではなく、「優先席では席を譲るべきだ」と思う人が減っているという調査結果もある。乗換案内サービス「駅すぱあとfor WEB」を運営するヴァル研究所(東京都杉並区)が16年11月に発表した「ゆずりあい精神の意識調査」によると、「優先席では席を譲るべきだと思いますか」との問いに、「はい」と答えた人は、前回調査(13年実施)より17ポイントも下がり、約76%にとどまった。
一方、「いいえ」と、譲るべきだとは思わない人は7ポイント以上増え、9%弱。「どちらともいえない」が約15%だった。譲る意識の低下には、「席を譲ろうとしたら相手に断られた」経験がある人が増えている事が背景にあるようだ、と同研究所は推測している。
東京メトロのサイトをみると、優先席について「ご高齢の方、お身体の不自由な方、内部障がいのある方、乳幼児をお連れの方、妊娠している方に席をお譲りください」とある。首都圏の他の私鉄サイトを見ても、概ね同様の説明となっており、空いている席に座るのは問題なく、優先対象の人がいたり、優先対象の人から申し出があったりすれば譲る、という利用を想定しているようだ。