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「1億総活躍」社会 消費増税の支えが必要だ

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軽減税率対象のブンヤが税率UPしろと吠える!




 税率10%への消費増税を、予定通り2017年4月に実施するのか、先送りするのか。

 安倍首相がいつ、どう判断するかに関心が集まっている。

 増税はもともと15年10月の予定だったが、首相は一昨年秋、先送りを決めた。その際の記者会見で、リーマン・ショック級の混乱や東日本大震災並みの災害に見舞われた場合を除き、「(増税を)再び延期することはないと断言する」と語った。

 この判断基準について、首相は基本的に変えていない。経済指標を見れば、現状が「リーマン級」「大震災並み」と言えないのは明らかである。

 過去最高を更新してきた企業収益に陰りが見え、熊本地震も起きたが、長期的な視点に立って消費増税は予定通り実施するべきだ。

 消費税収は「税と社会保障の一体改革」の枠組みに従って社会保障に充てられる。新たな施策の財源に回すのは一部にとどまり、国債発行に頼ってきた分の置き換えが多いが、将来世代へのツケ回しをずるずると続けるわけにはいかない。

 政府は熊本地震の復旧復興対策として7千億円余の補正予算案を決めた。足元の景気、とりわけ低調な個人消費のてこ入れ策も、効果的な対策を見極めつつ、消費増税とは切り離して考えるべき課題である。

 ■欠かせない財源確保

 政府は近く、「1億総活躍プラン」をまとめる。

 保育士や介護職員の待遇を改善する。所得が少ないひとり親世帯に支給する児童扶養手当を増やす。「渡し切り」の給付型奨学金の創設を検討する。社会保障や教育の分野を中心に、最近決めた施策や今後の検討課題が並ぶ見通しだ。

 貧困に直面する人への支援は待ったなしだ。介護や子育ての負担も広く分かち合いたい。国民が生き生きと暮らし、働ける社会を作るには、支え合いが欠かせない。プランがめざす方向性には多くの人がうなずこう。

 ただ、それには財源が要る。

 政府内では、第2次安倍政権の発足後、民主党政権時と比べて税収が増えた分を「アベノミクス」の成果ととらえ、プランの財源にすればよいとの声が根強い。確かに国の年間税収は、8%への消費増税による分を除いても数兆円規模で増えた。

 それでもなお、今年度予算では財源不足を補う新規国債の発行が34兆円余と予算総額の3分の1を上回り、借金残高は1千兆円を超える。その現状から目をそらしてはならない。

 1億総活躍プランも、そこに盛り込んだメニューだけで支え合いが完成するわけではない。すでに開いた財源の穴をこれ以上広げず、さらに狭めていくには、負担増が避けられない。

 「パナマ文書」は、大企業や富裕層の税逃れの実態をうかがわせる。毎年度の予算に効果が疑わしい施策が残るのも確かだ。税金を取るべきところから取り、予算を不断に見直すのは当然だが、税制改革による税収増、とりわけ安定した税収が得られる消費税の増税をはずせないのも財政の現実である。

 ■再分配政策の大切さ

 近く発表される1~3月期の経済成長率はゼロ近辺にとどまるとの予測が多い。海外経済の不安や円高基調を背景に、長く好調だった企業収益は減益に転じそうだ。

 今後のカギを握るのは、国内総生産(GDP)の6割を占める個人消費の動向だろう。

 企業全体の利益水準はなお高く、蓄えはたっぷりある。法人減税で企業を後押ししてきた政策を改め、家計の所得につなげる仕掛けを考える。一部の金持ちだけが潤っても経済成長はおぼつかないから、貧富の差をならす。そうした再分配を強化するには、所得税相続税を含む税制全体の見直しが必要だ。

 老後や子育てに不安が強ければ、財布のひもを緩める気にはなるまい。税制とともに再分配を担う社会保障のほころびを繕う作業も続けねばならない。

 参院選を前に、政府与党では商品券やクーポン配布への期待が広がる。だが消費を喚起する効果は長続きせず、むしろ反動減や財政悪化を招きがちだ。

 ■長期の視点で判断を

 安倍首相は、14年4月の8%への消費増税が予想以上に消費に影響を与えたと懸念する。消費がさえない原因はしっかり分析する必要があるが、自らが一翼を担った可能性についても省みるべきだ。

 第2次政権発足直後の12年度末に成立させた大型補正予算は13年度に順次執行され、増税を控えた駆け込み需要とあいまって景気を押し上げた。それが増税後の落ち込みを深く、長くしたという専門家は少なくない。

 首相に求められるのは、将来を見すえ、社会や経済の構造を変えていく政策判断である。目先の選挙を意識し、有権者の歓心を買おうとするかのような対応は、政策をゆがめ、国民にツケを残すだけだ。

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