2016年のニュルブルクリンク24時間レースの安全性を向上させるため、主催者はGT3レースカーの出力を2015年比で10%減らすことを義務付ける方針とした。この動きは、今年3月に開催されたVLN(ニュルブルクリンク耐久選手権シリーズ)の決勝レース中に、ヤン・マルデンボロ選手が乗っていた日産「GT-R NISMO GT3」が浮き上がって起きた死傷事故の影響によるものだ。特に難しいフルークプラッツと呼ばれる地点で起きたこの事故では、フェンスを越えたマルデンボロ選手のマシンに巻き込まれて観客1人が死亡している。これを受けて、主催者は恒久的な解決を探しつつ、24時間レースから2カ月間、コースの3つの地点に最高250km/hの速度制限を設けていた。この速度規制は、自動車メーカーの走行テストなど、レース以外にも適用されたため、ラップタイムの新記録樹立を事実上不可能にしていた。
ドイツ・モータースポーツ協会(DMSB)による事故と安全性の調査を指揮した、元ドライバーのハンス・ヨアヒム・シュトゥック同協会会長は「(事故が起きた)その瞬間、自分たちが限度を超えてしまっていたことを我々は理解したのです」と語っている。レースには通常18ほどのクラスがあり、その上から4つのクラスであるSP9/GT3、SP7、SP-Pro、SP-Xでは、来年5月に開催されるレースで出力を10%減らして出走することになる。今年、主催者は各チームに走行スピードが抑制される強いダウンフォースを発生させる構造を許可してきたが、来年はエアロダイナミクスの利用をより制限し、車高を高くするよう義務付けることで発生するダウンフォースを減らすようだ。シュトゥック氏は、「マニュファクチャラーとサプライヤーのほとんどが、年々数秒ずつ速くなるクルマを自分たちの手で抑制しなければならないことは理解している」と語っている。